アンセルメと、彼が育て上げたスイス・ロマンド管弦楽団によるフランス音楽管弦楽集。
A面にはフォーレの劇付随音楽「ペレアスとメリザンド」組曲、歌劇「ペネロープ」への前奏曲、そして付随音楽「マスクとベルガマスク」組曲が、B面にはドビュッシーの「小組曲」を収録。
1961年2月22日から24日にかけて、スイスのジュネーヴにあるヴィクトリア・ホールで録音されました。このホールは、その優れた音響特性からDecca黄金期の録音で頻繁に使用されています。
プロデューサーはマイケル・ブレムナー、そしてバランス・エンジニアは、Deccaサウンドの象徴である「デッカ・ツリー」方式の共同開発者でもあるロイ・ウォレスが担当。
Ernest Ansermet - Faure: Pelleas Et Melisande, Debussy: Petite Suite
Decca - SXL 2303

あるオーディオ評論家がドビュッシーの「小組曲」を聴いた際、「右チャンネルのはるか外側から聴こえるコントラバスの音に、思わず飛び上がった」と語った逸話があります。
ヴィクトリア・ホールの豊かな残響を捉えつつも、各楽器の輪郭は決してぼやけることがありません。数学者でもあったアンセルメはフランス音楽特有の曖昧な印象主義に流されることなく、構造やリズムを明晰に描き出していきます。
スイス・ロマンド管弦楽団の、時に「フランス的」と評される独特の明るい音色も、作品と見事に融合し、他のどの演奏とも違う、魅力を生み出しているのではないでしょうか。
アンセルメとスイスロマンド管の演奏は、技巧的に優れているかといえば、素人が聴いても厳しいと思うことも結構あります。特にSXL2000番台の作品はどれも高価ですから、無条件で全てを受け入れるほど、(財力も含め)余裕はありません。
実際、春の祭典は手放しました。
演奏も録音も今一つな印象に加え、他に決定版といえる演奏が複数あったからです。
ここで収録されているフォーレもよく言えば素朴な、悪く言えば田舎臭い感じはありますが、作品本来の優雅さ、美しさは感じることができますし、オリジナルに限って言えば、音質も悪くないです。味わい深いレコードです。
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