1970年代のデッカにおける、いわゆるスモールデッカのレコードの中では最も人気のある作品の1つです。
Kyung-Wha Chung - Bach: Partita No. 2, Sonata No. 3
DECCA - SXL6721

チョン・キョンファの作品としては、コン・アモーレ(Decca – 417-289-1)の次に入手難な作品です。
録音当時、彼女は27歳でしたが、すでに神童としてキャリアをスタートさせ、主要なコンクールで優勝するなど国際的な名声を確立していました 。
このレコードが今日、希少盤とされている理由は、一概に知名度の低さだけでは説明できません。
彼女はジュリアード音楽院の出身で、名教育者イヴァン・ガラミアンの指導を受けました 。
ガラミアンは、絶大な技術的コントロール、構造的完全性を重視することで知られています 。ではなぜ、彼の指導がアカデミックな演奏スタイルではなく、むしろその対極にあるスタイルを生み出したのでしょうか
チョン・キョンファ自身が「ガラミアン先生は、非常に強固な基礎技術とともに、表現の完全な自由を与えてくれた」と語っているように 、彼の厳格な規律は創造性を縛る枷ではなく、むしろそれを解放する力となりました。
揺るぎない技術的基盤を生徒に与えることで、彼は技術的な破綻を恐れることなく、極めて個性的で情熱的な解釈を追求する自由を許しました。
チョン・キョンファの初期の燃えるような、時に「野性的」と評されるスタイルは、彼女の受けた訓練への反抗ではなく、むしろその究極的な達成であったと言えるでしょう。
その演奏は、批評家から「きびきびとして直接的、技術的に自信に満ち、前向きな推進力に溢れている」と評される一方で、「ロマンティックで深みのある音色、情熱的なクライマックス、そして長いレガートのフレージング」といった特徴も指摘されています。
この録音が行われたオール・セインツ教会、ピーターシャムは、1970年代にデッカが室内楽やソロの録音に定期的に使用していた元教会です 。その音響は「比較的大きな教会の響き」が特徴で、録音に温かみと空間的な広がりを与えつつも、ソロ・ヴァイオリンに適した、過度に重くならない明瞭な音響特性で知られています。
70年代なので、英盤のED4、いわゆるスモールデッカ(ナローバンド)が初出です。
何度か入手していますが、マトリクスは1W/1Wが存在します。私が買った範囲では1W/1Wと3W/1Wしか見たことはありません。オランダプレスとはそれなりに差があると感じます。オランダプレスも3W/1Wでした。
レコードを入手するまではCDでしか聴いていませんでしたが、この作品は断然アナログの方が良いですね。
この時代に全集を録音して欲しかったですね。
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